難聴と認知症の研究
「関係がある」という報告と、「全体では差が出なかった」という試験があります。
このページは研究の結果を紹介するものです。補聴器が認知症を防ぐ、治すとは言えません。物忘れや聞こえが気になるときは、医師に相談してください。
国際的な報告:難聴は「変えられる危険因子」の一つ
英国の医学誌ランセットの委員会は、2024年の報告で、認知症の危険因子のうち変えられる可能性がある14の要因を挙げ、その一つに難聴を含めました。14の要因をすべてなくせば、理論上は認知症のほぼ半分(約45%)を防ぐか遅らせられる可能性がある、と推計しています。
委員会は提言の中で、難聴のある人が補聴器を利用しやすくすることと、騒音を減らして難聴を防ぐことを挙げています。ただしこれは、多くの研究をまとめた「関係がある」という推計で、一人ひとりに当てはまる予測ではありません。
試験の結果:全体では差が出なかった
米国のACHIEVE試験(ランセット 2023年)は、70〜84歳の難聴のある977人を、補聴器などの聞こえの支援を受けるグループと、健康教育を受けるグループに分けて3年間比べました。
| 結果 | |
|---|---|
| 参加者全体 | 3年間の認知機能の低下に、はっきりした差はなかった |
| あらかじめ決めた分析 | もともと別の研究に参加していた人と、新たに募集した人とで、効果の出方に違いがあった |
研究者は「主な分析では、聞こえの支援は3年間の認知機能の低下を減らさなかった」と結論しています。一部の人で違いが見られたことは、今後の研究の課題とされています。
このサイトの考え方
- 「認知症の予防のため」を理由に補聴器をすすめることはしません
- 補聴器を考える理由は、会話やテレビ、外出など、いまの暮らしで困っていることを減らすためです
- 聞こえの状態と補聴器の必要性は、耳鼻咽喉科の医師が判断します
費用の面では、両耳20万円の補聴器を10年使うと総額約101.9万円です。家族で話し合うときは、効果をうたう広告ではなく、医師の説明と自分の数字で考えましょう。
まず耳鼻咽喉科で、補聴器が必要かを相談する
聞こえにくさの原因は人によって違い、治療で良くなるものもあります。まず耳鼻咽喉科(できれば補聴器相談医)で診察と検査を受け、補聴器が合うと言われたら、認定補聴器技能者がいる店で試聴・調整をしてから決めましょう。医療費控除や助成も、多くは医師の書類が出発点です。
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出典
- Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet 2024;404:572-628
- Lin FR, et al. Hearing intervention versus health education control to reduce cognitive decline in older adults with hearing loss in the USA (ACHIEVE). Lancet 2023